2020.04.06

アドテクについて数年振りに調べ直してみたところやはり新しいサービスが生まれていた

次世代システム研究室の Y.I. です。

久しぶりにアドテクプロダクトへ参加することになり、アドテクについて改めて調べ直したのでまとめます。 RTB(Real Time Bidding) が出てきた時も高度な仕組みで驚きましたが、さらに発展した仕組み Header Bidding などが普及しているようで、アドテクの進歩には度々驚かされます。

アドテクサービス遷移

ざっくりですが以下の流れで新しい仕組みが出てきています。
純広告
 ↓
アドネットワーク
 ↓
アドエクスチェンジ / RTB
 ↓
Header Bidding
 ↓
PMP(Private Market Place)

アドテクサービス解説

純広告

広告主と媒体が直接契約して媒体に広告を配信する仕組み。広告主からみて広告出稿したい媒体や広告掲載枠へ広告出稿できる。

課金形態は表示期間や表示回数に対して料金を支払う。事前に配信期間や回数が保証されるため優先的に広告が配信される。

デメリットとしては、広告出稿したい媒体や広告掲載枠毎に取引が必要になるため、複数の媒体へ出稿する手間がかかる。

アドネットワーク

複数の媒体をまとめたネットワークで1つのアドネットワークから複数の媒体へ広告出稿できる仕組み。

純広告では、1媒体や広告掲載枠毎に契約していたのに対して、アドネットワークは1つのアドネットワークと契約することでネットワークに属する複数の媒体や掲載枠に対して広告出稿することができる。

課金形態がアドネットワーク毎に異なる。 CPC(広告クリック)課金、CPM(インプレッション)課金やCPA(成果報酬)課金などがある。

アドエクスチェンジ

各媒体やアドネットワークが持つ広告枠を相互に交換できる仕組み。広告枠を交換できる仕組みによりアドネットワークよりも膨大な広告掲載枠を提供可能になる。

また課金形式に対しても、掲載枠の交換に伴い媒体やアドネットワーク毎に異なっていた課金形式が入札インプレッション形式へ統一されることになった。課金はCPM(1000回のインプレッション=広告表示)ベースで入札する。

アドエクスチェンジの登場により、 RTB 形式の広告市場が形成された。

RTB (Real Time Bidding)

広告掲載枠のリアルタイムオークション。オーディエンスが広告掲載枠があるサイトにアクセスする度に、掲載枠をオークションにかけて落札された広告を配信する仕組み。アドエクスチェンジにて入札インプレッション形式課金に統一されたことで RTB が普及するきっかけになった。

入札側はサイトへアクセスしているPCやSPなどのオーディエンス情報(どのような人なのかといった情報)や掲載枠の情報を元に入札有無や金額を判断する。このリアルタイムオークションは開始から落札まで0.1秒程度で行われる。

媒体からオークションリクエストをSSPへ出す際は、掲載枠のオークションを行う際、同時にSSPへ通知が届くのではなく、順番に1つのSSPへ通知が届きオークションが開催される。オークションの落札者がなかった際には、次のSSPへ通知が届きオークションが開催…と順番に各オークションが開催される。この順番にオークションされることを「ウォーターフォール型」と言う。

なお、 Google Ad Manager(GAM) を利用している場合、まず GAM 内にて入札が行われ floor price (最低入札金額)を満たした場合、 SSP へオークションリクエストは発生しない。

膨大な掲載枠や広告が参加者を限定せずにオークションされるため、性的な側面を持たない広告がアダルトサイトへ表示されるなど意図しない広告配信がされることがあり、ブランドイメージ毀損などの問題が発生している。

RTB に関わるサービスについて、オークションをかけるサービスを SSP(Supply Side Platform)、入札するサービスを DSP(Demand Side Platform)、オーディエンス情報を提供するサービスが DMP(Data Management Platform) となる。

RTB の共通仕様として OpenRTB というプロトコルが用いられている。


DSP(Demand Side Platform)

RTB の広告掲載枠オークションに入札するサービス。広告を出稿したい広告主が利用するサービス。DSP は複数の SSP と繋がっていて SSP からの入札リクエストに対して入札を行える。

広告主が広告を届けたいオーディエンス情報にあったオーディエンスやセグメントへ配信する機能を持つ。 DSP 各社は入札可能な SSP 接続、様々なセグメントへの入札、そして分析機能により落札しやすくするなどで差別化を図っている。

SSP(Supply Side Platform)

RTB の広告掲載枠をオークションにかけるサービス。広告掲載枠を販売したい媒体(メディア)が利用するサービス。 SSP は複数の媒体や DSP と繋がっていて掲載枠のオークションを開催する。 落札した DSP の広告を表示できるようにする。

DMP(Data Management Platform)

広告効果をあげる情報を提供するサービス。様々なオーディエンス情報やログデータを貯め分析して広告効果向上をサポートする。ビッグデータと呼ばれる膨大な情報をを元にオーディエンス分析などを行う。各サイトのオーディエンス情報を紐づけてどのサイトを閲覧しているか、何を購入しているかなどオーディエンスの属性情報を持ち、広告効果の最大化に貢献する。

OpenRTB

RTB のプロトコル仕様。 IAB が定めている。現在の主流は OpenRTB 2.5 であり、 次期バージョンの 3.0 が策定中となっている。

OpenRTB 2.5 仕様

– Bid Request 入札サンプル (OpenRTB 2.5 仕様から抜粋)
{
  "id": "80ce30c53c16e6ede735f123ef6e32361bfc7b22",
  "at": 1, "cur": [ "USD" ],
  "imp": [
    {
    "id": "1", "bidfloor": 0.03,
    "banner": {
      "h": 250, "w": 300, "pos": 0
    }
    }
  ],
  "site": {
    "id": "102855",
    "cat": [ "IAB3-1" ],
    "domain": "www.foobar.com",
    "page": "http://www.foobar.com/1234.html ",
    "publisher": {
      "id": "8953", "name": "foobar.com",
      "cat": [ "IAB3-1" ],
      "domain": "foobar.com"
    }
  },
  "device": {
    "ua": "Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_6_8) AppleWebKit/537.13
    (KHTML, like Gecko) Version/5.1.7 Safari/534.57.2",
    "ip": "123.145.167.10"
  },
  "user": {
    "id": "55816b39711f9b5acf3b90e313ed29e51665623f"
  }
}
– Bid Response 落札通知サンプル (OpenRTB 2.5 仕様から抜粋)
{
  "id": "1234567890", "bidid": "abc1123", "cur": "USD",
  "seatbid": [
    {
      "seat": "512",
      "bid": [
        {
          "id": "1", "impid": "102", "price": 9.43,
          "nurl": "http://adserver-domain/winnotice?impid=102",
          "iurl": "http://adserver-domain/pathtosampleimage",
          "adomain": [ "adserver-domain" ],
          "cid": "campaign111",
          "crid": "creative112",
          "attr": [ 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 12 ]
        }
      ]
    }
  ]
}

Header Bidding

複数の SSP が同時に入札する広告掲載枠のリアルタイムオークション。RTB は DSP が入札するリアルタイムオークションだが、 Header Bidding は SSP が入札するリアルタイムオークション。 複数の SSP が順番にオークションを開催する RTB と異なり、 複数の SSP が掲載枠を同時に入札できて、落札した SSP が DSP へ掲載枠のオークションを開催する。

媒体にとって、掲載枠を一番高く入札する SSP へ掲載枠を販売できるので、より収益が上がる可能性が高い。Header Bidding や RTB は入札価格高騰を防ぐためにセカンドプライスオークションが採用されることが多い。セカンドプライスとは、1番高い入札額ではなく、2番目に高い入札額+1円を落札額とするもの。近年、最高入札額を落札額とするファーストプライスオークションを採用するプロダクトも出てきている。

Header Bidding 実装として Prebid.js がある。


Prebid

Header Bidding を実現するオープンソースのプロダクト。オープンソースであり APACHE LICENSE, VERSION 2.0 の元で公開されている。

Prebid はプロダクトスイートであり、
・ website に設置して Header Bidding を Prebid Server へ要求する Prebid.js
・ Header Bidding オークションを行う Prebid Server
・ iOS/Android アプリに組み込み Header Bidding を Prebid Server へ要求する Prebid Mobile
がある。

現在、Prebid.js に対応している Bidding プレイヤー(SSPやアドエクスチェンジ) は290プロダクトを超えている。日本の RTB プレイヤーも何社か Prebid に参加されている。

Header Bidding 対象の SSP は Prebid サイトで Prebid.js をダウンロードする際に、対象の SSP や アドエクスチェンジを選択することで指定 SSP に対応した Prebid.js をダウンロードできる。 ダウンロードした Prebid.js を媒体の website に設置して、オーディエンスからのアクセスがあった際に Prebid.js が Prebid Server へリクエストすることで Header Bidding が開始される。

PMP(Private Market Place)

特定の広告主と媒体社のみで広告売買を行うプライベートな広告市場。限られた媒体、広告主のみが参加しているため、高品質の広告や掲載枠が扱われる。そのため、オープンな RTB よりも高単価な入札となる。 PMP にはプライベートな RTB 形式や固定単価や固定単価かつ在庫予約可能な取引形式がある。

最後に

RTB が出てきたのは、過去のリーマンブラザーズ大不況がきっかけと言われています。大不況によりアメリカの金融エンジニアがアドテク領域へジョブホップしてきて RTB を生み出したと言われています。 2020年現在、新コロナウイルスによる経済不安が起きている状況にあり大変な状況ですが、今回の不況をきっかけにより新しいアドテクサービスが生まれるかもしれませんね。

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