2019.01.17

量子コンピュータ(シミュレータ)を用いて、通貨間の最大アービトラージチャンス問題の解決


こんにちは、次世代システム研究室のA.Zです

昨年の10月頃、DWave社が提供した、クラウド上で、量子アニーリングコンピュータを利用できるサービス(DWave Leap)が発表されました。
これからは様々な業界で、簡単に量子アニーリングコンピューターが試せるので、量子アニーリングの活用が広まるではないかと思います。

今回、金融分野(FX)にある通貨間の最大アービトラージの問題をDWaveが提供量した量子アニーリングシミュレーターで解決の話を紹介したいと思います。
基本的に、同じコードで実物のマシンでも動くので、参考にはなるではないかと思います。




問題の概要




通貨間のアービトラージ通貨間アービトレージとは通貨間の為替インバランスを利用したアービトレージ行動です。

今回の問題は以下のページから、参考します。
http://www.quantumforquants.org/quantum-computing/qa-arbitrage/

このインバランスの状態の中に、最大の収益を見つかるのは今回のフォーカスになります。
複数通貨の為替は常に変化し、通過間のバランスの状況に至るまで、タイムラグがでることもあります。

例えば特定の時点で、複数通貨の為替は以下の通りになります。








上記の状態で、もし、青い線のように取引すると、簡単にアービトラージの収益が得られます。









得られる収益は









理論上では、短期間で、ほぼノーリスクで収益に取れるのはかなりおいしい話いですが、実際にはいくつかの問題があります。




  • 通貨間のインバランス状態は一瞬で無くなります。こちらは計算スピードの大事です
  • アービトラージのチャンスの検知だけであれば、heuristicのアルゴリズムで解決できますが、
    最大アービトラージのチャンスを見つかるとなると、古典のコンピューターには困難の問題(NP問題)になります。最大収益率自体はそんなに高くないので、色々手数料とか考えると、ただのアービトラージのチャンスと最大アービトラージチャンスの違いは大きくなり、利益が取れる・取れないかに影響します。



上記の理由で、今回、量子コンピュータで、その問題を解決して見たいと思います。




問題定義




最大アービトラージ問題を解決するために、まず問題の解決ため条件は洗い出します。今回はの問題の解決条件は以下です。




条件 1




もし通貨間の為替は有向グラフで、表すとしたら通貨間の最大アービトレージは最大収益を持つサイクルでければなりません。
例えば以下のグラフだと青い線の最大サイクルになります。









こちらの条件で、以下の計算式です、表現できます。












上記の式はlogのcijの最大化と同じ意味なので、以下のように書き換えます。








条件 2




一つの通貨に対して必ず同じ回数で買い・売りを行うこと。

例えば、以下のケースの場合はCADは2回買い取引・1回売り取引になっているのて、NGになります。








こちらの条件は以下の式で表現できます。








つまり、買いと売りの回数が同じじゃなかったら、ペナルティを与えます。




条件 3




一つの通貨に対して必ず1回で買い・売りを行うこと。
例えば、以下のケースの場合はCADは2回買い取引・2回売り取引になっているのて、NGになります。








こちらの条件は以下の式で表現できます。








つまり、買いと売りの回数が1回じゃなかったら、ペナルティを与えます。


今回の問題の最終的なコスト関数は以下です。








実装のサンプルコード




今回は以下のDWaveが提供したSDK(DWave ocean sdk)を利用します。

https://github.com/dwavesystems/dwave-ocean-sdk

こちらのSDKは利用し、DWave Leapにも繋がるので、コードはほぼ変わりません。また、シミュレーター機能もあるので、限られているDWave Leapの計算時間使わずに、自由に先に試行錯誤することができます。

量子アニーリングを利用するために、上にある条件を以下のIsingモデルに変換する必要です。









Ising modelの変換するためのコードは以下にです。

条件 1:








条件 2:








条件 3:








シミュレーターの呼ぶコード








これで、一通り動かせると思います。




結果




今回のテストは以下のように通貨グラフになります。








こちらのグラフの最大アービトラージは青い線にサイクルになります。
利益率は0.074%です。

実際に、プログラムの実行結果の出力みると、ちゃんとその回答が出てきます。プログラムの出力結果の例:




answer :{0: 0, 1: 0, 2: 1, 3: 0, 4: 0, 5: 0, 6: 0, 7: 0, 8: 1, 9: 0, 10: 0, 11: 0, 12: 0, 13: 0, 14: 0, 15: 1, 16: 0, 17: 0, 18: 1, 19: 0}
answer energy :-0.00032021339941934457
answer num_occurrences :1 
answer edges: [('USD', 'CAD'), ('JPY', 'USD'), ('CAD', 'CNY'), ('CNY', 'JPY')]
profit : 0.07375904861752769



量子アニーリングの一つ特徴で、毎回の実行で結果変わる可能性があります。
今回シミュレーターで、あくまで理想な状態になり、実際のマシンではまた様々な異なる点があるかもしれません。あとは、実際の量子アニーリングコンピュターで、同じ結果がでるかどうか楽しみですね。




最後に




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