2024.01.11

unit test の動作速度を速めるためにMySQLからH2 databaseに移行しようとした話

次世代システム研究室の Y.I です。H2 Database(以下 H2)について、MySQL 8向けに動作する unit test コードの速度アップを目的として、unit test用DBを H2 へ変更しようとして得た知見をまとめます。 最終的に変更を断念したのですが、その内容も含めて知見として残しておければと思います。

一般的な違い

H2 DatabaseとMySQL 8は、異なる用途と環境に適した特徴を持っています。

  • H2は主に開発やテスト環境向け、MySQLは本番環境や大規模アプリケーション向け
  • H2は組み込みおよびインメモリデータベース、MySQLはトラディショナルなリレーショナルデータベース
  • H2は軽量で高速、MySQLは大量のデータ処理と高い並行処理をサポート
  • H2はインメモリ操作に特化したSQL機能を提供し、軽量な処理に重点を置いている
  • H2はモードにより各種DBのSQLにほぼ対応できる(MODE=MySQL/MariaDB/PostgreSQL/Oracle/MSSQLServer/DB2など)

該当バージョン

検証した各DBバージョンはこちらになります。

  • H2 2.2.224
  • MySQL 8.0.28

SQLサポートの違い

MySQLからH2へ移行する際に修正が必要だったSQLです。

set コマンドで使えるものが異なる

MySQLで使える SET コマンドがなかったり異なるコマンドになっている

=>対策: 該当のコマンドを H2公式(https://h2database.com/html/commands.html)から探す。コマンドがなければ対策なし。

- 文字設定
(MySQL)  SET CHARACTER_SET_CLIENT
(H2) なし

- 外部キー制約 ON/OFF
(MySQL)  SET FOREIGN_KEY_CHECKS
(H2) SET REFERENTIAL_INTEGRITY (※ただし試した環境では機能しなかった)

- カレントスキーマ変更
(MySQL)  use {DB}
(H2) SET SCHEMA {SCHEMA_NAME}
など

mysql変数は使えない

MySQLで変数に値を登録しておき後で元に戻すなど利用できるがH2ではエラーになる

=>対策: なし

(MySQL)  SET @OLD_CHARACTER_SET_CLIENT=@@CHARACTER_SET_CLIENT ;
(H2) なし

INDEX名はスキーマ内でユニークにする必要がある

MySQLはテーブル単位でINDEX名がユニークならば動作するが、H2はschema単位でユニークにする必要がある

=>対策: スキーマ内でユニークになるようにINDEX名を定義する

(MySQL) TABLE A ... `KEY `idx_01` (`column1`);  TABLE B ... `KEY `idx_01` (`column1`);  テーブルが異なるので重複OK
(H2)  TABLE A ... `KEY `idx_01` (`column1`);  TABLE B ... `KEY `idx_01` (`column1`);   スキーマ内で重複NG

 

set型が利用できない

MySQLにある set型が h2には存在せず利用できない。ただしENUM型は利用できる。

=>対策: ENUM型を利用する(要件が許せば)

(H2) 
CREATE TABLE ....
`column1` SET('PC', 'SP') CHARACTER -- SET utf8mb4 NOT NULL,
Unknown data type: "SET"; SQL statement:

FULLTEXT KEY は使えない

MySQLで使える全文検索キー FULL TEXT KEYはH2では利用できずエラーとなる。

=>対策: なし

(H2) 
CREATE TABLE .... FULLTEXT KEY `ft_title_description` (`title`,`description`)
org.h2.jdbc.JdbcSQLNonTransientException: 不明なデータ型: "KEY"
Unknown data type: "KEY"; SQL statement:

DEFAULT NULL がエラーとなる

MySQLで設定できる DEFAULT NULL が以下のカラム定義でエラーとなる。

=>対策: なし(要件が許せばDEFAULT NULLを除外)

CREATE TABLE  ...
     `column1` varchar(2500) COLLATE utf8mb4_bin DEFAULT NULL

enum カラムに DEFAULT 設定があるとエラー

MySQLで利用できるenum型にDEFAULT設定があるとH2ではエラーとなる。

=>対策: DEFAULT箇所を除外(要件が許せば)

(H2) 
CREATE TABLE ....
        `column1` enum('DAILY', 'FULL') COLLATE utf8mb4_bin NOT NULL DEFAULT 'DAILY' 

カラムにCOLLATEとDEFAULT定義あるとエラー

MySQLではテーブルおよびカラムにCOLLATEを設定できるが、H2ではエラーになる。

=>対策: カラムのCOLLATE設定をやめてテーブル単位で設定する

(H2) 
CREATE TABLE ....
    `column1` varchar(255) COLLATE utf8mb4_bin NOT NULL DEFAULT '',

enum型カラムに charset utf8mb4 がエラーとなる

=>対策: テーブル定義にcharsetを定義してカラム定義のcharsetを削除する

(H2) 
CREATE TABLE ....
    `column1` enum('aa', 'bb') charset utf8mb4 NOT NULL 

decimal型カラムに unsigned 指定があるとエラー

H2でdecimal型は使えるが unsigned 指定に対応していない。(検証したバージョンにて)

=>対策: なし。(要件が許せば) unsigned 指定をやめる

(H2) 
CREATE TABLE ....
    `column1` decimal(5, 4) unsigned NOT NULL DEFAULT 0 

まとめ

H2にMySQLモードで動作する設定がありますが、細かいところなど多数の違いがあることがわかりました。標準SQLに沿ったSQLだったり、シンプルなSQLならば問題なくH2で動作しますが、MySQL拡張設定などを利用する場合、(要件が許せば)TABLE定義を変更するなどしない限りH2で代替とすることは難しいかもしれません。 ですが、unit testを目的とするならば、 DEFAULT設定やSET型を一時的に変更してテストすることは可能です。筆者が進めていた対策は、unit testのinit処理でCREATE TABLEする際に、CREATE TABLE文のH2でエラーとなる箇所を置換してから実行することで対応していました。

・置換コマンド(Mac)

sed -i '' '/--/d' schema-.sql;
sed -i '' '/^SET /d' schema-.sql;
sed -i '' 's/SET(/enum(/' schema-.sql;
sed -i '' 's/set(/enum(/' schema-.sql;
sed -i '' '/FULLTEXT KEY/d' schema-.sql;
sed -i '' '/CONSTRAINT/d' schema-.sql;
sed -i '' '/KEY `/d' schema-.sql;
sed -i '' 's/DEFAULT NULL//' schema-.sql;
sed -i '' "s/DEFAULT 'DAILY'//" schema-.sql
sed -i '' "s/DEFAULT 'NON'//" schema-.sql
sed -i '' 's/COLLATE utf8mb4_bin//' schema-.sql;
sed -i '' 's/charset utf8mb4//' schema-.sql;

# 末尾カンマ削除
sed -e ':a' -e 'N' -e '$!ba' -e 's/\n/ /g' schema-.sql > schema--h2.sql;
sed -i '' 's/, ) ENGINE/ ) ENGINE/g' schema--h2.sql;
sed -i '' 's/,  ) ENGINE/ ) ENGINE/g' schema--h2.sql;
sed -i '' 's/, )ENGINE/ ) ENGINE/g' schema--h2.sql;
sed -i '' 's/;/;\n\n/g'  schema--h2.sql;

最後に

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