2022.10.11

ERC3525 Semi-Fungible Token をソースコードから読み解く

こんにちは。次世代システム研究室のT.M です。

はじめに

先日、ERC3525 が新しいトークン規格として承認されました。ERC3525 はSemi-Fungible Token(SFT)と呼ばれるトークンであり、金融商品などへの応用が期待されているトークンです。本稿では、SFT の仕様を理解するために、EIP で提示されている実装例を読み解きました。

注意

本稿で記述されているコードの一部は、EIP3525 のデモンストレーション用のコードであり、EIP3525 のREADMEに書いてあるように実際のサービスとしての利用に足るコードではないことにご注意ください。

Semi-Fungible Tokenとは

Fungible Token(FT) はERC20 を代表とするトークンであり、代替性トークンと訳されます。全てが同一データの集合であり、通貨としての用途で使われることの多いトークンです。一方、Non-Fungible Token(NFT)はERC721 を代表とするトークンであり、非代替性トークンと訳されます。それぞれが唯一無二のデータの集合であり、アートの所有権管理としての用途で使われることの多いトークンです。

Semi-Fungible Token(SFT)は、半代替性トークンと訳され、それぞれが複数個を許容されたデータの集合であり、金融商品としての応用が期待されているトークンです。SFT はNFT のように各トークンがメタデータに紐づけられており、また、FT のように同一トークンを統合したり、反対に分割をしたりすることができます。

ERC1155 との違い

ERC3525 に似たトークンとして、ERC1155 というトークンがあります。ERC1155 は、NFT において複数個を許容される応用において利用されているトークンです。両者ともメタデータに紐づけられたトークンが複数個存在することができる、という点で同じです。

ERC1155 とERC3525 の異なる点の一つは、柔軟性です。ERC3525 の方が柔軟性が高いです。ERC1155 では、同一メタデータに紐づけられたトークンは全て同じデータですが、ERC3525 では、同一メタデータに紐づけられたトークンはそれぞれ異なるデータになります。そのおかげで、同一トークンであったも異なる価値をつけることができ、金融商品などへの応用に期待されています。

もう一つの異なる点として、ERC3525 はERC721 の拡張である、ということです。つまり、ERC3525 はERC721 でできることが全てできる、ということです。例えば、NFT のマーケットプレイスにERC3525 のトークンを出品することができます。

ERC3525 のソースコード

EIP において、ERC3525 のソースコード例があるので、それをもとにERC3525 の仕様を理解していきます。

データ構造

ERC3525 のデータ構造は以下のように定義されています。
/// @dev tokenId => values
mapping(uint256 => uint256) internal _values;

/// @dev tokenId => slot
mapping(uint256 => uint256) internal _slots;
ERC721 のコードを継承しているので、どのアドレスがどのトークンを所有しているか、という部分が記述されていません。
// Mapping from token ID to owner address
mapping(uint256 => address) private _owners;
ERC721 のコードと合わせて読むことで、誰がどのトークンの所有者であるか、そのトークンはいくつあるか、そのトークンのslot(メタデータ)は何か、ということがデータとして保存されていることがわかります。

TransferFrom

TransferFrom には、トークンの移転、分割、統合の3つのケースがあります。

トークンの移転は、ERC721 から継承したものになります。パラメータは、(address _from, address _to, uint32 _tokenId) という形です。ソースコードについては解説を省略します。

トークンの統合は、パラメータは( uint256 fromTokenId_, uint256 toTokenId_, uint256 value_) という形であり、以下のようなコードになっています。
function transferFrom( uint256 fromTokenId_, uint256 toTokenId_, uint256 value_) public payable virtual override {
    _spendAllowance(_msgSender(), fromTokenId_, value_);

    _transfer(fromTokenId_, toTokenId_, value_);
}

function _transfer( uint256 fromTokenId_, uint256 toTokenId_, uint256 value_) internal virtual {
    require( _exists(fromTokenId_), "ERC35255: transfer from nonexistent token");
    require(_exists(toTokenId_), "ERC35255: transfer to nonexistent token");

    require( _values[fromTokenId_] >= value_, "ERC3525: transfer amount exceeds balance");
    require( _slots[fromTokenId_] == _slots[toTokenId_], "ERC3535: transfer to token with different slot");

    address from = ERC721.ownerOf(fromTokenId_);
    address to = ERC721.ownerOf(toTokenId_);
    _beforeValueTransfer(from, to, fromTokenId_, toTokenId_, _slots[fromTokenId_], value_);

    _values[fromTokenId_] -= value_;
    _values[toTokenId_] += value_;

    _afterValueTransfer(from, to, fromTokenId_, toTokenId_, _slots[fromTokenId_], value_);

    emit TransferValue(fromTokenId_, toTokenId_, value_);
}
注目すべきは、require( _slots[fromTokenId_] == _slots[toTokenId_], ”ERC3535: transfer to token with different slot”); というコードです。統合先と統合元が同じslot である、ということが統合の条件となっています。

トークンの分割は、パラメータは(uint256 fromTokenId_, uint256 toTokenId_, uint256 value_) という形であり、以下のようなコードになります。
function transferFrom( uint256 fromTokenId_, address to_, uint256 value_) public payable virtual override returns (uint256) {
    _spendAllowance(_msgSender(), fromTokenId_, value_);

    uint256 newTokenId = _getNewTokenId(fromTokenId_);
    _mint(to_, newTokenId, _slots[fromTokenId_]);
    _transfer(fromTokenId_, newTokenId, value_);

    return newTokenId;
}

function _mint( address to_, uint256 tokenId_, uint256 slot_) private {
    ERC721._mint(to_, tokenId_);
    _slots[tokenId_] = slot_;
    emit SlotChanged(tokenId_, 0, slot_);
}
特徴的なのはトークンをmint している、というところです。mint の処理では、ERC721 のmint をして、mint されたトークンに分割元のトークンと同一のslot を割り当てます。次に分割する個数だけ分割元のトークンの個数を減らし、mint されたトークンの個数を増やします。こうすることで、分割されたトークンはERC721 トークンでありつつ、また、個数やslot という情報を付与することができます。

slotURI

ERC3525 では、tokenURI の他にslotURI に追加のメタデータであるslot を保存します。tokenURI のソースコードとほぼ同じです。
function slotURI(uint256 slot_) public view virtual override returns (string memory)
{
    string memory baseURI = _baseURI();
    return bytes(baseURI).length > 0 ? string(abi.encodePacked(baseURI, "slot/", slot_.toString())) : "";
}

まとめ

NFT とFT の間の存在である、Semi-Fungible Token(SFT)という新しいトークンの概念が生まれました。SFT は金融商品として期待されるトークンです。

SFT の標準仕様としてERC3525 が承認されました。ERC3525 の仕様を理解するために、サンプルコードを読み解きました。

ERC3525 はERC721 を継承したものであるため、扱いやすいトークンとなっています。今後も注目をしていきたいと考えました。

 

 

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