マスアダプションなるか?EXPO 2025デジタルウォレット
はじめに
こんにちは、Y.C.です。来る大阪・関西万博に先駆け、EXPO 2025 デジタルウォレットの提供が始まっています。すでにさまざまなキャンペーンが展開されNFTが配布されています。今回はこのウォレットアプリと、そのバックボーンであるPalette Chainについて紹介します。結論ファースト
- 色んなキャンペーンNFTが配布中
- NFT送信のtransactionはウォレットで管理するアカウントから発行され、手数料無料
- 今後資格情報としての活用やNFTを送り合うような仕掛けを作れるか注目
EXPO 2025 デジタルウォレット
EXPO 2025 デジタルウォレットはHashPort社が提供するウォレットアプリで、以下の3つの機能を併せ持っています。
- 電子マネー
- ポイント
- web3ウォレット
こちらは、展開中・今後展開予定のキャンペーン一覧です。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000046288.html
食品、交通、自治体等多様な業界がNFTに期待を寄せているようです。配布されるNFTの多くがSBT(Soul Bound Token, 他者に送信できないNFT)となっています。
https://hashport.io/news/hashport%E3%80%81%E4%B8%80%E8%88%AC%E7%A4%BE%E5%9B%A3%E6%B3%95%E4%BA%BA%E5%A4%A7%E9%98%AA%E5%A4%96%E9%A3%9F%E7%94%A3%E6%A5%AD%E5%8D%94%E4%BC%9A%E3%81%A8%E9%80%A3%E6%90%BA%E3%81%97%E3%80%81%E3%80%8Cexp
配布されるNFTは、コレクションするだけでなく、飲食店で掲示することで割引を受けられるなど実益を兼ねたものもあります。
Palette Chain
Palette Chainは、特定の管理者が開発運用するコンソーシアム型のブロックチェーンです。BitcoinやEthereumのように誰もがネットワーク運用に関われるパブリック型とは異なり、中央集権的になる代わりにスケーラビリティが向上しNFT送受信にかかるガス代=手数料が不要となっています。EXPO 2025 デジタルウォレットで操作できるのは、このPalette Chain上のアカウントです。Palette Token
Palette Chainの基軸通貨は、Palette Token (PLT) です。Palette Chainのネイティブ通貨ではなくERC-20 Tokenとして存在します。NFT作成者の手数料支払いやステーキングで利用されます。PLTはPalette ChainとEthereumの双方に存在し、それぞれpPLT、ePLTとして区別します。ブリッジを行うことにより双方を跨いだ移転が可能です。
Palettescan
https://palettescan.com
Pallete Chain上の状況を確認できるエクスプローラーです。ブロック生成間隔は15sのようですね。
自分のウォレットアドレスを入力することで、保有しているNFTがブロックチェーンに刻まれていることを確認できます。
RPC Endpoint
Ethereum系のブロックチェーンではEthereum JSON-RPCでノードと通信を行いますが、Palette ChainでもそのEndpointが公開されており、Metamaskといった任意のウォレットを利用したり手動でリクエストを送ったりすることができます。https://tech.palette-docs.com/palette-developer-documentation/development/blockchain-deployments
ブラウザ上でEthereum JSON-RPCリクエストを発行できるetherflowを使って、PLT Tokenがプールされているアカウントの残高をチェックしてみました。
explorerでも確認してみました。確かに一致しています。
https://palettescan.com/#/chain/txs/0x0000000000000000000000000000000000000105
しかし、任意の命令が利用できるわけではないようです。試しにPLT Token contract の codeを取得しようとしたところ、addressが返ってきてしまいました。
また、このドキュメントによると将来的にNFT contractのdeploy・NFTのmintに手数料が設定されるそうで、逆に現時点では手数料無料かもと思い適当な自前のcontractをdeployしようとしましたが、estimateGasの時点で失敗しました。当たり前ですが誰でもcontractをdeployできるようにはなっていません。
- remixでデプロイする際のestimateGasの結果
{"jsonrpc":"2.0","id":3935953724,"error":{"code":-32602,"message":"too many arguments, want at most 1"}}
- remixが発行するestimateGasのパラメータから”latest”を取り除きgasLimitも十分にした結果
{"jsonrpc":"2.0","id":228086343,"error":{"code":-32000,"message":"gas required exceeds allowance (700000000) or always failing transaction"}}
PLTウォレット
Palette Chainに対応した先発のウォレットアプリとして、PLTウォレットが存在します。EXPO 2025 デジタルウォレットと機能を比較してみました。EXPO 2025 デジタルウォレット | PLTウォレット | |
---|---|---|
対応ブロックチェーン | Palette Chain | Palette Chain, Ethereum |
EXPO 2025配布NFTの受け取り | OK | NG |
NFTの送信 | OK | OK |
FTの送信 | OK (pPLT) | OK (pPLT, ePLT, ETH) |
秘密鍵のexport | NG | OK |
PLTのブリッジ | NG | OK |
PLTのステーキング | NG | OK |
万博を楽しむためにはEXPO 2025 デジタルウォレットが必要となります。一方、ブロックチェーンの機能を最大限活用するにはPLTウォレットが必要となります。
体験
実際にEXPO 2025 デジタルウォレットでNFTをやりとりしてみます。NFTの受け取り
現在展開中のキャンペーンである大阪環状線NFT駅スタンプラリーのNFTをもらうため、JR大阪駅の改札前まで行ってみました。このように、普通の駅スタンプの台座に受け取り用の2次元バーコードがあります。
アプリ内で2次元バーコードを読み取ると、NFTを受け取ることができます。
体感30秒くらいでコレクションに追加されました。2ブロックでconfirmationでしょうか。
Palettescanでtransactionをチェックしてみます。
知らないアドレスから、このNFTのcontract account のaddress に対してtransactionが発行されています。自分のaccountから直接transactionを発行しているわけではないことがわかりました。
NFTの送信
つづいて、NFTの送信を試してみます。確かに手数料はかからないようです。
送信後にPalettescanを見ると、自分のアドレスからcontract accountのアドレスに対してtransactionを発行できていました!
おわりに
特定の組織が運用を行うコンソーシアム型のブロックチェーンはサービス終了のリスクが付きまとうため、EXPO2025デジタルウォレットで受け取ったNFTが太陽の塔のように何十年も愛される存在になるかは分かりません。しかし万博に訪れる何千万もの人々がいきなりウォレット、NFT、SBTといったワードに触れ、体験できる機会を提供しているのは非常にインパクトが大きいです。現時点で既に様々なNFTが配布されており、コレクションしたり、持っているNFTを見せて店舗で割引を受けるなど、”所有”を楽しむことができます。そこから一歩踏み込んで、所有の事実を自動的に認証して恩恵を受けられるような資格情報としての活用が進むと、マスアダプションが大きく前進する機会となりうると思います。また、すべてを確認できたわけではないですが配布されるNFTの多くがSBTであるため送受信することができません。手数料無料を活かし、会場内でNFTを送り合う魅力を感じるような仕掛けが出てくることにも期待です。