2017.06.19
Z.com Cloud ブロックチェーンで仮想通貨を実装する ver.2
こんにちは。次世代システム研究室のT.M. です。
はじめに
本ブログでも、いくつかの記事で取り上げているように、Z.com Cloud ブロックチェーンおよびConoHa ブロックチェーンがβ版としてリリースされております。利用方法の解説として、ガイドが公開されておりますが、ガイドには、コントラクトの実装についてサンプル程度のものしかないため、実際にアプリケーションでは、どのような実装になるか、イメージがつかみにくいかもしれません。そこで、本記事では、実践的なアプリケーションの実装を行いましたので、全3回でそのコード解説およびデモンストレーションを行います。本投稿は第2回になります。第1回はこちらになります。
アプリケーション ver.1 おさらい
ver.1 では、サンプルアプリケーションとして、仮想通貨を実装しました。Z.com Cloud ブロックチェーンのスマートコントラクトの作成方法に則り、Main コントラクト、Logic コントラクト、Event コントラクトおよびTable コントラクトの4種類のコントラクトを作成しました。仮想通貨の機能として、所持金の確認および仮想通貨の移動のみを実現しました。
アプリケーション ver.2 概要
一般的にブロックチェーンは記録したデータの改ざんができないため、スマートコントラクトさえも内容を変更することができません。そのため、バグ修正や新機能の追加もすることができません。しかし、Z.com Cloud ブロックチェーンでは、コントラクトのバージョンアップが可能です。本記事では、通貨の発行機能を追加することで、Z.com Cloud ブロックチェーンのバージョンアップ方法について説明します。
バージョンアップでは、Main コントラクトは継承をして、Logic コントラクトは差分だけを新しいバージョンとし、Main コントラクトから適切なバージョンのロジックを呼び出します。クラス図は以下の通りです。
スマートコントラクト
通貨の発行機能には、Main コントラクトおよびLogic コントラクトの変更が必要です。一方で記録するデータに変更がないため、Table コントラクトには修正が必要ありません。また、今回は、発行のイベントはアドレス0からの送金イベントとみなすので、Event コントラクトにも修正が必要ありません。
Main コントラクト
Main コントラクトとして、MyCoinContract_v2.sol は以下の通りであり、ポイントとなるコードを解説します。
pragma solidity ^0.4.2; import './MyCoinContract_v1.sol'; import './MyCoinLogic_v1.sol'; import './MyCoinLogic_v2.sol'; contract MyCoinContract_v2 is MyCoinContract_v1 { MyCoinLogic_v2 public logic_v2; function MyCoinContract_v2(ContractNameService _cns, MyCoinLogic_v1 _logic1, MyCoinLogic_v2 _logic2) MyCoinContract_v1(_cns, _logic1) { logic_v2 = _logic2; } function setMyCoinLogic_v2(MyCoinLogic_v2 _logic2) onlyByProvider { logic_v2 = _logic2; } function checkTimestamp(uint _timestamp) private constant returns(bool) { return (now - TIMESTAMP_RANGE < _timestamp && _timestamp < now + TIMESTAMP_RANGE); } function create(bytes _sign, uint _timestamp, uint _value) { if (!checkTimestamp(_timestamp)) throw; bytes32 hash = calcEnvHash('create'); hash = sha3(hash, _timestamp); hash = sha3(hash, _value); address sender = recoverAddress(hash, _sign); logic_v2.create(sender, _value); } }
MyCoinContract_v1 の継承
Z.com Cloud ブロックチェーンのコントラクトでは、Main コントラクトはVersionContract を継承する必要があります。バージョンアップの際は、以前のバージョンのMain コントラクトを継承することで、新しいバージョンのMain コントラクトを作成します。これにより、VersionContract の継承も行い、かつ旧バージョンの機能も継承することができます。ただし、以前の機能を削除したい場合は、オーバーライドして無効にしたり、VersionContract を直接継承して、必要な機能をすべて記述する必要があります。
Logic コントラクトの呼び出し
Main コントラクトでは、旧バージョンを含めた適切なバージョンのロジックを呼び出します。
Logic コントラクト
Logic コントラクトとして、MyCoinLogic_v2.sol は以下の通りであり、ポイントとなるコードを解説します。
pragma solidity ^0.4.2; import '../../gmo/contracts/VersionLogic.sol'; import '../../gmo/contracts/AddressGroup_v1.sol'; import './MyCoinAccountTable_v1.sol'; import './MyCoinEvent_v1.sol'; contract MyCoinLogic_v2 is VersionLogic { MyCoinAccountTable_v1 public myCoinTable_v1; MyCoinEvent_v1 public event_v1; address public admin; modifier onlyFromAdmin(address _sender) { if (_sender != admin) throw; _; } function MyCoinLogic_v2(ContractNameService _cns, MyCoinAccountTable_v1 _myCoinTable, MyCoinEvent_v1 _event, address _admin) VersionLogic(_cns, 'MyCoin') { myCoinTable_v1 = _myCoinTable; event_v1 = _event; admin = _admin; } function exist(address _account) constant returns (bool) { return myCoinTable_v1.exist(bytes32(_account)); } function create(address _sender, uint _value) onlyByVersionContractOrLogic onlyFromAdmin(_sender) { if (!exist(_sender)) myCoinTable_v1.create(_sender); myCoinTable_v1.setAmount(_sender, getAmount(_sender) + _value); event_v1.send(0, _sender, _value); } function getAmount(address _account) constant returns (uint) { return myCoinTable_v1.getAmount(_account); } }
VersionLogic の継承
Logic コントラクトでは、Main コントラクトとは異なり旧バージョンのLogic コントラクトを継承しません。なぜなら、Main コントラクトが必要に応じて、それぞれのバージョンのLogic コントラクトを呼び出すからです。その結果、新バージョンのLogic コントラクトでは、新機能のみを実装すれば良いです。
Web アプリケーション
上記で実装したMyCoin に対して、Web アプリケーションとして利用する方法を解説します。ここでは、上記コントラクトがデプロイされているものとします。
ABI の変更
Main コントラクトが変更されたため、ABI を変更する必要があります。変更箇所は、管理画面およびクライアントアプリです。
デモンストレーション
実装したアプリケーションのデモンストレーションを行います。
通貨発行
通貨を発行することのできるアカウントのアドレスを0xfc865f061f183129985e9224a52293a95bb1f916、一般ユーザのアカウントのアドレスを0xadd1c664db02f7fcb898ed6cbb1fc63635c11a1d とする。通貨発行アカウントが1111 だけ通貨を発行することで、所持金が増加します。
権限のないユーザの発行禁止
一般ユーザが通貨を発行します。その際は、エラーが出て失敗します。
送金処理
旧バージョンの機能であった、送金処理も可能です。
送金元の所持金が減ります。
送金先の所持金が増えます。
さいごに
Z.com Cloud ブロックチェーンの特長である、コントラクトのバージョンアップを行うことで、コントラクトに新機能を追加しました。一般的なプログラムにおけるバージョンアップとは異なるため、理解しづらいかもしれません。この記事が理解の助けになればと思います。
次回予告
Z.com Cloud ブロックチェーンには、データをアクセスコントロールして管理する、というものがあります。次回はそれを利用して、さらに追加の機能を実装します。
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