2021.07.02

タートルズトレードポリシー(入門)

こんにちは。次世代システム研究室のY.R.です。外国人です。最近定量的取引の研究調査を行っておりますので、こちらで勉強したことを皆さんと共有致します。宜しくお願い致します。

はじめに

リチャード・デニスと「タートルズの秘密」

リチャード・デニスはアメリカの有名な投資家です。400ドルを数十億ドルにしたという取引伝説があります[1]。


リチャード・デニスは高校の同級生だったウィリアム・エックハートと「優秀なトレーダーを育成できるか」という議論して賭けをしました。この議論について皆さんはどう思われますか?

実は1983年と1984年、デニスは2度に亘り『ウォール・ストリート・ジャーナル』に広告を出して、教えられた投資手法を実験終了後5年間で絶対に口外禁止という条件で、トレーダーを募集、育成しました。 最終的には「タートルズ Turtle Traders」は23人育成され、成功をおさめたため『優秀なトレーダーを育成できる』という結論をつけました。タートルズの名前の由来はデニスが東南アジアに旅行に行ったときに見た亀の養殖にちなんで、トレーダーを養殖するという目的で名つけられたのです[2]。

タートルズの秘密」は必読の書類と考えられています。著者のラッセル・サンズは「タートルズ」の門下生として知られています。

この本でタートルズという投資戦略は初めて明らかになりました。ここでタートルズ取引ポリシーについて詳しく述べるまえに、この本に書いてある複数の認知バイアスを紹介させていただきます。これらの認知バイアスはタートルズ取引ポリシーに緊密な関連性があると思われますし、別の取引方法論について触れておくのも役に立つと思います。
  • 損失回避(loss aversion):損失を回避することを第一に優先します。即ち、お金を失うことはお金を稼ぐことよりもはるかに重要です。
  • 埋没費用の影響(sunk costs effect):将来使われる可能性のあるお金よりも、使われたお金に注目してしまう傾向があります。
  • 廃棄効果(disposition effect):早期利益を上げますが、損失が続きます。
  • 結果の好み(outcome bias):結果だけに注目し、その決断に至った過程は特に重要視
  • トレンドへの興味(recency bias):最近のデータや経験を追いたがり、過去のデータや経緯を無視しがちです。
  • アンカー効果(anchoring):簡単に入手できる情報に頼りすぎてしまう傾向があります。
  • トレンドフォロー(bandwagon effect):他の多くの人がそれを信じているという理由だけで、盲目的に1つのことを信じてしまう傾向があります。
  • 小数の法則(the law of small numbers):少なすぎる情報から根拠のない結論を導き出してしまう傾向があります。
こちらは「タートルズの秘密」で上記の認知バイアスを何回も読んで理解しました。

タートルズポリシーの紹介

「タートルズの秘密」によると、タートルズトレーダー達は二週間のトレーニングを受けたそうです。そのトレーニングの要点は以下の4つです。

タートルズポリシーの要点
  • アドバンテージをつかむ:長期的にはプラスのリターンを生み出すことができるので、プラスの期待を持つ取引戦略を見つけます。長期的に取引を考えます。
  • リスクコントロール:リスクをコントロールし、自分の陣地をまもります。そうしないと、プラスの期待のシステムがあっても、それが結果を生み出す日を迎えることはできません。タートルズポリシーでは、リスクを非常に警戒しています。誕生して以来リスクコントロールはタートルズポリシーの優先項目となっています。
  • 最後までやり通すこと:取引ではポリシーを貫き通します。これは非常に難しいと思われ、多くの方々は早期利益を上げてしまうと心を引かれてしまう傾向があります。
  • わかりやすさ:タートルズポリシー自体は難しいものではありません。これについて、皆さんは次のポリシーに関する説明を読めば、よく理解していただけるかと思います。トレンドをつかむことはタートルズポリシーの核心です。だからこそ、タートルズポリシーはトレンドフォローを念頭に置いたポリシーになります。

アベレージ・トゥルー・レンジ(ATR)とドンチャンチャネル (DC)

タートルズトレードポリシーをよく理解するために、まずは二つのテクニカル指標について把握しておかなければなりません。

アベレージ・トゥルー・レンジ(ATR)[3]

アベレージ・トゥルー・レンジ(ATR)はマーケットのボラティリティを測るためによく使われるテクニカル指標です。


具体的な計算は以下のようになります。先ず真の変動幅(True Range)を算出します。

1.当日高値と当日安値の差

2.当日高値と前日終値の差

3.当日安値と前日終値の差

上記の3つの値幅を比較して、最大の値幅のものをTrue Range(真の変動幅)とします。

ATR=TRのn日間の指数平滑移動平均値(EMA)

最もポピュラーな使用法は以下になります[4]。

ATRが上昇している→ボラティリティーが高くなっている→トレンドの発生の可能性を示唆

ATRが下降している→ボラティリティーが低くなっている→トレンドの終了、転換の可能性を示唆

タートルズトレードポリシーではポジションの増加あるいは損失を避けるために、ATRを利用します。

ドンチャンチャネル(Donchian Channels 略称:DC)[5]

指標の名前通り、ドンチャンチャネルは、米国の投資家 リチャード・ドンチャン氏によって開発されたトレンドフォロー指標です。算出法は以下になります。
  • UPPER BAND = 直近n日の最高値
  • LOWER BAND = 直近n日の最安値
  • ミドルライン:(上部バンド - 下部バンド)÷2

上記のグラフでは昨年10月から直近までBTC-USDTのDC(n=30)を表しています。

タートルズトレードポリシーでは、DCを利用することでポジションが自動的に判断されて建てられます。つまり、タートルズトレードポリシーはトレンドフォローポリシーのひとつなのです。

タートルズトレードポリシーの仕組み

  • 資金管理:投資金額を小さく分ける、更にATRを組み合わせてトレードを実行します。
  • トレンドフォロー: ドンチャンチャネル (DC)を利用します。
  • 利益を獲得したら(0.5*ATR)、ポジションを増やします。
  • 損失は制限(2*ATR)を超えたら、ポジションを全部クローズします。
更に、ポリシーのバリアントが多いです。

タートルズポリシーの検証

これから、BTC-USDTスポットでタートルズポリシーの検証を皆さんに共有致します。

検証の設定

データ: OKEX BTC-USDT, スポット, Daily level

期間: 2020/01/01/ – 2021/06/30、三つの段階に分けていました。

初期資金: 10,000 USDT

フレームワーク:FMZ [6]

変数説明
数値
flash_rateトレード頻度24
trade_percentage資産比率0.01
dc_rangeDCの周波数20
atr_lengthATRの周波数24

結果


2020/01/01ー2020/05/31


2020/06/01ー2020/12/31


2021/01/01ー2021/06/30

時期Total ProfitSharpe RatioVolatility Max Drawdown
2020/01/01-2020/05/312.04%0.0045.34%13.04%
2020/06/01-2020/12/31111.35%0.16611.23%14.65%
2021/01/01-2021/06/31-11.1%-0.0357.32%25.21%


同じくポリシーは三つの時間段階でパフォーマンスは大きく変わっていました。2020/06/01ー2020/12/31でBTCは賑わっていました。タートルズトレードポリシーはトレンドフォローのポリシーとして、高い収益を生みました。変動性が高い時期(2020/01/01ー2020/05/31と2021/01/01ー2021/06/30)で収益は良くなかったです。これらの結果をトレンドフォローポリシーに当てはめると、相場トレンドの起動を判断することは難しい問題と考えられます。

まとめ

今回、皆さんにタートルズトレードポリシーをめぐって、ポリシーの誕生、理念とロジックをご紹介させていただきました。そして、BTC-USDTのスポット相場でタートルズポリシーをバックテストしました。タートルズポリシーは市場トレンドをつかめることで良くやったと感じますし、検証で良いパフォーマンスが出ていました。更にリスクコントロールはポリシーの一環になっております。しかし、普段トレンドということは金融市場で少ないと考えられます。これから、タートルズ取引ポリシーのパラメータチューニングに取り込むと計画します。本場の取引でポリシーを運用していく予定です。将来、進捗を皆さんに共有させていただきます。

終わり

次世システム研究室では、ビッグデータ解析プラットホームの設計・開発を行うアーキテクトとデータサイエンティストを募集しています。興味を持って頂ける方がいらっしゃいましたら、ぜひ 募集職種一覧からご応募をお願いします。 一緒に勉強しながら楽しく働きたい方のご応募をお待ちしております。

 

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