2015.03.12

カスタマージャーニーマップでタッチポイントを明確にしたら設計・開発の意思決定が早くなった話

こんにちは、UI/UX領域を担当しているT.I.です。

今回は弊社クラウドサービスのコントロールパネル開発でカスタマージャーニーマップを用いて開発を進めているお話をしたいと思います。


カスタマージャーニーマップの提唱者のひとつとしてAdaptive Pathが著名かと思います。

彼らの The Anatomy of an Experience Map の図などが代表されるように「ユーザーがとる行動を区分け」どのような行動をとったか。ユーザーは何を考え、どこに不満を感じ、改善すべき点は何かと書き出し、可視化することで仮説をたてる材料とするのです。

具体的に実施したこと

1.評価したいモック画面を用意する
2.サービス利用する際のタスクを書き出し、テスト用紙に記載する
テスターへのタスクを具体的に書き出します。想定される立場なども含めて書くと良いです。下記にテスト用タスクの用紙例を記載しています。
3.ペルソナに近しい人物を探す
ペルソナ(サービスを利用想定される人物)を探してテスターになってもらう(基本的に社内調達)
4.テスターに2で作成したタスクを行ってもらう。
テスターには「極力、思考発話しながらタスク実行して欲しい」「我々は観察するので特に喋らない」2点を伝え、テストを開始する。思考発話については慣れないとテスターが寡黙になりやすいので、状況によっては「喋って喋って」など声掛けがあっても良いと思います。
5.テスターの行動を付箋紙に書き出す
一つのタスクに一つの付箋が良いです。例:(○○をクリック)(ナビメニュー部分を左右にカーソル動かす)
特にどこに触れたか。タッチポイントの箇所をどんどん記録するのが良いです。
6.テスト後に評価シートをテスターと見ながらインタビュー

小さい粒度のテストで1人約20分。多い日で半日くらいをテストに費やしています。

テスト用タスクの例

あなたは商社でシステムエンジニアです。
このたび人事異動で社内のサーバー管理者となりました。
前任者から引き継いだサーバの契約情報を元に以下のタスクを実行したいです。

- Task1
ログイン情報を元にサーバーの管理画面にログインします。
(ログインURL / ログインID / Password を記載する)
- Task2
サーバーの管理者パスワードを変更する
- Task3
現在のサーバーディスク容量を確認する
- Task4
管理者が変わったので登録している管理者情報を自分の氏名などに書き換える
評価テストで使用するシート。

実際にテスト時に出来た評価シートの一部(※開発中の為、ボカシを入れています)

PowerPoint版も作成し誰でも出力・管理できるようにしましたが、手描きのものわざわざ手入力するのも手間なので撮影したものを共有する運用にしています。
手間を掛けて作ると「作り直すことが勿体ない」と感じるものです。
建築家の方が設計図を書くときに良く手書きで書いては捨て、書いては捨てを繰り返すのをイメージしますが、あの形はとても合理的で「気軽に作って気軽に捨てること」を自分自身も意識しています。

生まれた効果

・問題点が明確に見えるので(比較的誰でも)仮説を立てやすい
経験値が浅いジュニアスタッフでも改善すべきポイントを早く見つけられました。経験豊富なUI設計者であればつまづきやすい点なども事前に気付くこともありますが、優秀なスタッフの工数にも限りがあります。誰でもできる=みんなで設計・評価できる事は大きな武器になります。

・意思決定の指標になり、決定が早くなった
具体的な結果が出るのでチーム内の納得感が強く、決定が早くなりました。

現状の課題

・テスト用のタスク設定には一定の経験が求められる
特に誘導尋問になることが多いのです。例えば「先月の利用料金を確認する」というタスクに対して、「請求管理画面から先月の料金を確認してください」とテスト用のタスクを書いてしまえばそもそもクリックする場所を言っているようなものです。しかし気をつけないとこのようなテスト文章を書いてしまうことは往々にしてありえます。

・海外向けサービスの場合、ペルソナを探すのが難しい
国内向けの場合は想定されるユーザーに近しい人物を社内からも探せるのですが、海外向けサービスの場合は人物リクルートに悩むことが多々あります。同じ国籍のスタッフが居たとしても、その人物がペルソナにどこまで近いかコントロールが難しいです。

・テスターが観察者を意識してしまうテスト環境
評価テストをする際に観察者がテスターとなるスタッフの後ろで操作を観察することが多く、一部のテスターの方からも「どうしても後ろの人が気になってしまう」と至極当然のコメントを貰うこともあります。対策としてはミラーリングしたモニターを用意し、観察者はモニター越しに観察するなども実施していますが、手間と効果のトレードオフなので開発の状況を見てテスト環境の充実を図ろうと思っています。

今回は高速でプロトタイプ制作→PDCAを早く回すためにジャーニーマップを「小さく」「たくさん」作りました。今後は自己流のカスタマイズ等も盛り込んだものを進めたいと思います。

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